白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
怪盗アプリコット・ムーンの正体がローザベルで、夫を救うために自分を犠牲にして“稀なる石”で魔法をつかったのだと知ったフェリックスをはじめとした王家の人間たちは、ウィルバーに向けて「今度こそ手放すなよ」ときつく念をおしてきた。事情を知っていたダドリーだけが渋い顔をしていたが。
ダドリーがあと五年早く生まれていたら、ローザベルは彼の花嫁になっていたかもしれない。魔術の才能がある彼なら、ローザベルが“不確定な未来”などという悪夢に悩まされても心を読んで王家を巻き込んで不安解消に奔走しただろう、無能なウィルバーと違って。
ふと、そのようなことを考えて、ウィルバーは自嘲する。
「……どうして君は、俺に“愛”を捧げたんだい?」
ぴくりとも動かないローザベルに問いかけながら、黒いワンピースについていたくるみボタンをはずし終えたウィルバーは、そうっと肩を抱き上げて、右腕、左腕の袖を抜き取っていく。ぴったりとした長袖をゆっくりと剥がしていくうちに、ウィルバーの心のなかに、焦らされて恥じらいを見せるローザベルの姿が浮かびだす。