白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
……悩んでいるうちに、ウィルバーの姿は寝台に消えていた。ローザベルはふぅと息をついて、心の奥で彼を想う。無風の部屋から風が吹き、机の上に置かれていた杏色の封筒が舞い上がる。行き先はいつだって憲兵団長、ウィルバー・スワンレイク。
杏色の封筒は彼の枕元に届き、朝になって大騒ぎがはじまるのだ――……
『親愛なる憲兵団長さま
花残月の朔日に、花の離宮に眠る聖棺に宿る“稀なる石”を頂戴いたします。
怪盗アプリコット・ムーン』
運命の――花残月の朔日まで、あと三日。