白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ウィルバーの初恋と白鳥たちの怪盗捕獲計画

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 ウィルバー・スワンレイクは旧大陸アルヴスのグランスピカ公国の公爵の息子として生まれ、十歳の夏までそこで過ごしていた。
 当時、アルヴスは土地や資源をめぐる国同士のいさかいがしきりに起こっており、ウィルバーの父公爵もその争いに巻き込まれて命を落としている。
 奴隷階級の愛妾を母に持っていたウィルバーは父が亡くなったことで年の離れたふたりの異母兄と隔てられ、父の腹心の部下であった憲兵のもとで暮らすことになった。

 それなりに穏やかな暮らしだったが、戦況はますます悪化。スワンレイクの一族は散り散りになっていた。
 もはや、父が支えた母国は遅かれ早かれ地図から消えるのだと諦めもついていた。

 そんなときに新大陸ラーウスの存在が明るみになり、ウィルバーの兄たちが亡命した。故国を捨て新天地を夢見た彼らをウィルバーはどこか冷めた目で見ていた。
 やがて、祖父のマーマデュークがスワンレイクという国家を建立し、伯父のアイカラスを皇太子に擁立する。
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