白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ローザベルとウィルバーと神殿跡地

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 結婚初夜に視てしまった不確定な未来は、その後もウィルバーと身体を重ねる都度、顔を出すようになった。
 特に、深く愛し合い互いに達した夜、本来なら幸せな気持ちに浸れるときに限って残酷な情景が悪夢のようにローザベルにのしかかる。
 性交後にローザベルがひどく消耗する理由を、自分のせいだと勘違いしているウィルバーは回数を減らしたり、激しい動きを控えたりと、涙ぐましい努力を見せてくれるようになったが、ほんとうの理由を口に出せないローザベルは、申し訳ない気持ちに陥っていた。
 一緒に眠る夜に視る情景はモザイク画のようで、ひとつひとつが同じ出来事のようにも異なる出来事のようにも見える。

 王を殺して罪人となる夫を何度も夢で視て、魘されて、ローザベルは苦しんだ。けれど、夫にこのことは話せない。
 夫の仕事の邪魔になるから、寝付きが悪いからとあれこれ理由をつけて寝室を別にしてもらったが、結局のところ夢見の悪さが一番の理由だったのかもしれない。
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