LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「けども、結衣はずっと浮かない顔してるよね?」


「そんな事…」


否定するけど、それが力なくて。


「まあ、色々な親子が居るか」


私は、母親との関係が先程のあれで完全に壊れて、何処か寂しいと思っている。


そんな私だけど、いつの頃か私に対する母親の感情の異常さに気付き、あの母親から逃れたいとずっと思っていた。


だから、これで良かった、と思っているのに。


「昔から母親はあんな感じなんだけど。
ただ、一度だけいい思い出があって」


あれは、私が小学3年生の頃。


家の階段で足を踏み外した私は、
派手に階段から転がり落ちた。


その音を聞き付けて、母親は慌てて私に駆け寄って来た。


「結衣!大丈夫?
骨とか折れてない?
何処ぶつけたの?」


痛みで泣く私を抱きしめ、
私を心配するその声が、不安そうに揺れていた。


母親の私に対する愛情を感じた、その一度。


その一度が、忘れられなくて。


「結衣のお母さんは、なんであんなにも結衣を目の敵にしてんの?
よく、兄弟差別とかは耳にするけど。
お兄さんの事は可愛がっているみたいだから」


「よくある、母親は娘より息子の方が可愛いっていうのもあるのかもしれないけど。
うちの場合は…。
私の顔、母親に全然似てなかったでしょ?
うちの兄は、母親にそっくりなんだけど。
私、父親にも似てなくて」


「もしかして、結衣はあの家の本当の子供じゃないとか、そんな話?」


その言葉に、ゆっくりと首を横に振った。


「うち、昔父親側の祖母と同居してて。
その祖母は、私が幼稚園の時に亡くなったからあまり覚えてないのだけど。
ただ、祖母、凄く嫌な姑だったらしくて、うちの母親をずっと苛めていて。
その祖母に、私の顔がそっくりなんだって」


昔から、何度と母親に言われた言葉。



「あんたの顔、本当にあの姑にそっくり!
見てると、本当に腹が立つ」


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