LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
俺が衣服を身に纏い出すと、円さんは近くにあったティッシュで、
俺の出したそれを拭き取っていた。


それを、とても汚いもののように、
痛いんじゃないか、と思う程、
擦り付けるように拭き取っていた。



「篤に知られたら、俺殺されるかも」


俺に汚され傷付いている円さんを見ていると、篤の顔が浮かんだ。


篤がとても円さんを慕っているのを、
俺はよく知っている。


だから、その殺されるも、冗談ではなくて。



「篤には言わないで」


そうこちらを見る円さんに、え、と思ってしまった。


俺が篤に言うな、と言うならともかく。


「お願い、篤に絶対言わないで」


円さんの目から、またボロボロと涙が溢れ出す。


「なんで、篤に知られたくないの?」


分からないから、訊いていた。


この事を知った篤が俺に報復して、犯罪者になる事を恐れているのだろうか?



「篤、斗希君の事本当に好きだから。
斗希君も、篤の事好きでしょ?
あなた達の関係を、壊したくない」


その円さんの言葉に、胸が潰されたように痛くなった。


今まで、俺もこの人に弟のように大切に思われていたのに、それを壊した。


いや、もしかしたら、今もまだそう思ってくれているから、そんな言葉が出て来るのかもしれない。


心が苦しくて、耐えきれなくて。


「また時々こうやってヤらせてくれたら、篤には黙ってる」


壊れそうになる心を守る為なのか、俺はそう口にしていた。


心を黒く染め、強く守る為に。


今ここで、ごめんなさいなんて言って泣いてしまったら、
心が粉々に砕けてしまいそうで。


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