LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~

「何故、そこまでするんですか?」


「昔付き合っていた俺の彼女も、AV女優で。
金村の作品に出た。
その撮影は過酷なもので、彼女はその撮影で大怪我を負って…」


成瀬社長は、そこで言葉を濁したけど。

それ以上は、怖くて、訊けなかった。


「で、どうする?
今の金村は大手の専属の監督だから、その時みたいに過酷な事はしないと思うけど。
ただな、普通の撮影よりも、ちょっと酷だとは思う。
あの男は、そういう奴だから。
17の少女を撮ってみたいって思うような奴だ」


なんだか、あの金村監督だけではなく、
目の前のこの成瀬社長も怖いと感じる。


「寧々、どうする?
辞めるなら今だ。
一度AVに出たら、もう元のお前には戻れないぞ。
訊くのは、これで最後だ。
本気で考えろ」


そう言われても…。


「―――私、出ます…。
絶対に、辞めない」


AVに出たら、斗希さんと付き合える。


私は、斗希さんが欲しい。


「―――そうか、分かった」


成瀬社長は、再び車を走らせた。


元々、この人と私は仲が良かったわけではないけど、
その後ずっと沈黙が続いていた。


ただ、ポツリと溢した、成瀬社長の言葉が、妙に耳に残った。



「篤に俺を騙せって言った奴は、俺が今回の事で警察に捕まるとかは、二の次なんだろうな。
ただ、俺が信用していた篤に裏切られて、絶望を味わえばいいと思ってんだろうな」


多分、成瀬社長は、篤さんを動かしているのが、自分の腹違いのお兄さんだと分かっている。


分かっているから、私にその辺りの事をわざわざ訊いて来ない。


だから、今もそのお兄さんの事を言っているのだと分かっているけど。


私の頭に、斗希さんが浮かぶ。


斗希さんの目的は、本当に篤さんの為なのだろうか…。






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