LOVEREVENGE~エリート弁護士と黒い契約結婚~
「後、悪いけど。
俺の秘書から外れてくれねぇか?
梢は何も言わねぇけど、やっぱり嫌だろ。
俺の方から、秘書課の室長に言っとく」
川邊専務はそう言って、ごめん、と謝った。
「いえ。それには及びません。
今朝、人事部に辞表を出しました。
室長にも話してます。
今週一杯は出て、後はたまっている有給を消化する予定になっていますが、明日からは体調不良を理由に欠勤しようと思ってます。
暫くは、専務の秘書は岡田さん一人になりますが、室長もフォローしてくれるだろうし、大丈夫だと思います」
「なんで辞めるんだ?」
そう訊かれ、それに答えられなくて口を閉ざしてしまう。
私の妊娠は、このままお腹が膨らんだら、いつか周りに知られる。
川邊専務の秘書を辞めても、
この会社の顧問弁護士の斗希とは、ここに居たらまた顔を合わせてしまう。
斗希には、この妊娠を知られたくない。
私が妊娠している事を知って、斗希はどう思うのかと。
「いや。答えにくいなら、いい。
そっか。分かった。
斗希と仲良くな」
斗希の名前に、胸がギュっと痛くなる。
この人は、私と斗希が離婚する事を知らない。
遅かれ早かれ、それは知られるだろうけど。
「斗希の奴、マジで小林の事好きみたいだな。
寧々にお前の事殺すって言われて、
あいつあの部屋に行く迄、スゲェパニックになってて。
長い付き合いだけど、あんな風なあいつ初めて見た」
なんだか涙が込み上げて来そうになるけど、
それは、どういう涙なのか自分でも分からない。
単純に嬉しいのか、斗希と別れる私は、今さらそれを知って、悲しいのか。
「川邊専務、私もう小林じゃないですよ。
結婚して、滝沢ですよ」
また、小林に戻るけど。
「うっせぇ、滝沢って、なんか呼びにくい」
そう言って笑う川邊専務に、
「今までお世話になりました」
ともう一度頭を下げると、
専務室から出た。