木沢彰吾、禁煙を決意する 『恋に異例はつきもので』おまけSSその1
 俺は花梨の手からスマホを取り上げ、テーブルに置くと、自分の腿をぽんぽんと叩いた。
 
「……来いよ」

 ちょっとはじらって、でも言われた通り、花梨は俺の上に乗ってきた。

 背中に手を回して、ゆっくり弄る。
 くすぐったいらしくて、花梨は身をよじりながら訊いてきた。

「ねえ、彰吾さん。煙草、いつから吸ってたんですか?」

「うーん、中坊の頃にはもう吸ってたな」
「えーっ、そんな時から?」
「ああ、誰にも注意もされねえし、まわりの奴らもフツーに吸ってたから」

 そのころの俺は校内札付きのワル。
 と言っても、授業サボって屋上で煙草吸ってたぐらい。

「まあ、反抗期に毛が生えたようなもんだ、今思えば。なにせ、物心つく前に母親と死に別れて、引き取った父親も俺にまったく興味を示さねえし、継母は冷てえしさ。しょっちゅう家に帰らずにゲーセンに入り浸ったり。まあ、やりたい放題だったな、あの頃は」
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