木沢彰吾、禁煙を決意する 『恋に異例はつきもので』おまけSSその1

「彰吾さん……」
　花梨は目をふせ、唇をかむ。

　今、まさに目の前で俺が辛い目に合っているような顔をして。

「昔の話だ。そんな顔するなって」

「わたし、タイムスリップして、子供の頃の彰吾さんを抱きしめてあげたい」

　……。
「また、そんな可愛いこと言うなよ」

　そう言って、俺は花梨をぎゅっと抱き寄せる。
　花梨もそれに答えて、甘えるように俺の首に顔を埋めてくる。

　以前より、いくぶん伸びた髪に指を絡めながら、俺は話を続けた。　

「でも、姉ちゃんがいてくれたからな。ギリギリのとこで、人生、間違えずに済んだ。ああ、香穂と明の存在も大きかったな」

　花梨の、甘いシャンプーの香りや柔らかな肌の感触が俺の理性を危うくする。

　いつまで我慢できるか……ちょっと自信がなくなってきた。