鬼は妻を狂おしく愛す
でもあんな表情を見せられたら、自分にも見せてほしいと思ってしまう。

声をかけようか迷っていると、雅空と美来は車に乗り込んでしまった。
思わず車まで駆け寄る、妖子。

外にいた部下に止められる。
「ちょっ…お前、何━━━━━
ママ?」
「あ、えーと、雅空様をお見かけしたので、ご挨拶をと……」
「ちょっと、待ってて下さい」
部下が窓をコンコンとノックする。

窓が開いて、雅空が顔を見せた。
「若、妖子ママです。
ご挨拶したいとの事ですが……」
「は?
必要ない」
そう言って、閉めようとする。
それを思わず止めた、妖子。

「待って下さい!雅空様!!」
「お前…手を退けろ!!!」
そして妖子の目に、雅空に腰を抱かれている美来が入ってきた。
【どなた?】
美来が雅空の肩を叩いて聞く。
「手話……?」

「あー、クラブの、ママ」
ゆっくり答えた雅空に、美来が頷いて妖子に向かって軽く頭を下げた。
「こ、こんにちは…」
妖子も軽く頭を下げる。

「もういいだろ?
手を退けろよ!」
「あ、はい」
「犬飼、早く出せ」
と言いながら、窓を閉めた雅空だった。

「………どうして…あんな女が雅空様の…?」
雅空が結婚したことは、もちろん知っている。
店で結婚のお祝いがしたいと話し、奥さんを連れてきてほしいと声をかけると、
「は?なんで、お前等に見せないといけないんだ!?
美来を誰の目にも晒したくない」
と、一喝されたのだ。

だから、よっぽどの美人な妻だと思っていた。
「私の方が、断然………」
綺麗じゃん!!!
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