鬼は妻を狂おしく愛す
雅空は優しく美来の手を外し、口唇を重ねた。
「んんっ……んー」
「美来…可愛い……」

【バカ!】
頬を膨らませ、美来が雅空を睨みつけた。
でも雅空からすれば、可愛いだけだ。

雅空は“ハハッ”と笑って美来を抱き締めたのだった。

結婚を機に美来は、工場を辞め専業主婦になった。
いくら雅空が守ると言っても、ずっと一緒にいるわけじゃない。
美来は、鬼頭組若頭の妻だ。
狙われやすいのだ。
しかも耳が聞こえないので、雅空は毎日心配で気がきじゃない。
なので、美来を一人では行動をさせないようにしている。
家も高台にある大きな屋敷に住み(元々は雅空の別荘)屋敷の周りには常に部下達が見張っている。
外に出る時は、部下を最低三人はつけている。

その中の一人犬飼は、雅空が一番信頼してる部下で、今は美来にずっとつけている。

【今日ね、ケーキ買ってきたの。後から一緒に食べよ?】
「わかった」
雅空は甘いものが嫌いだ。

【大丈夫。甘さ控えめだから。
それでももし雅空が食べれないなら、明日犬飼さんと食べるから、心配しないで】
それを察した美来が雅空に伝えた。
「………」
途端に不機嫌になる、雅空。

美来は雅空の顔を見上げて覗き込み、
【お店の看板に甘さ控えめって書いてあったから、雅空と一緒に食べたいなって思ったんだけど嫌だった?
もし嫌なら、明日犬飼さんと食べ━━━━━】
雅空は手話の途中で、美来の手を握った。

びっくりして雅空を見つめる。
「やめて」
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