鬼は妻を狂おしく愛す
「俺を仲間外れにしないで」
そう言って掴んでいた美来の手を、そのまま引き寄せた。
そして口唇を奪うように重ねた。

「んんっ…!!
んーん…ん…」
雅空の胸をバンバン叩く、美来。
しばらく貪って、口唇を離した雅空。

「俺も一緒にケーキ食べるから、犬飼なんかにあげたりしないで。
あんまり、犬飼と仲良くしないで」
美来は雅空のすがるような言葉に、ドクンと胸が鳴ったのがわかった。

鬼頭組の若頭で、いつも年上の部下達をたくさん従えている雅空。
美来の前ではあまり見せないが、かなり恐ろしい雅空。
普段は、威圧感を出している雅空。
そんな雅空が、美来に甘えてすがる。
そんな姿に、美来は益々心が奪われていた。

【雅空、可愛い】
見上げて伝えると“可愛いのは美来だろ”と言って、また口唇を塞がれた。

【明日のデート行ける?】
食事をしながら、雅空に恐る恐る聞く美来。
雅空は普段忙しく、しかもヤクザの為あまり外に出たがらない。
屋敷の中で、二人っきりでただ美来に触れて色んな話がしたいと言う。
もちろん美来もそれだけでも十分幸せだが、たまには外に出かけたいと思っている。

前にもデートに行く約束をしていたが、直前になってやっぱり家でイチャイチャしたいと言われキャンセルしたことがある。
その為か美来は、少し遠慮がちになってしまっていた。

「うん、大丈夫」
頭をポンポンと撫でながら、微笑んだ雅空。
ホッと肩を撫で下ろし、美来も微笑んだのだった。

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