あの夏、わたしはキミに恋をした。
10年後


ミーンミーン

せみが鳴き続ける季節、夏がやってきた。
蒸し暑い中、わたしはある場所へ向かっていた。

“今日の打合せこのホテルでやるから、現地集合で”

遥からメールとともにマップが送られてきたのは今朝のこと。

あの夏、大輝と会えなくなってから10年がたった。


あの日からしばらく抜け殻状態になったわたしだったけど、上野くん、愛唯、遥、巧くんがずっとそばにいてくれた。

「野球馬鹿のことは忘れてさ、また次の恋愛しよう」


遥はそういってくれたけど、次の恋愛なんてもちろんすることもなかったし、大輝のことだって忘れた日はなかった。


でも少しだけ、野球からは離れた。

それは野球が嫌いになったからとかじゃなくて、野球をみると大輝を思い出してしまうから。


そのかわりにわたしは勉強を頑張った。

大輝がわたしの夢を応援してくれるといってくれたから、わたしは調理の道に進むことに決めた。


勉強をしているときは大輝のことも野球のこともしばらく忘れられたし、料理を作っているときも忘れられた。

お母さんもお父さんもしばらく心配してくれていたけど、それでも見守ってくれた。


わたしはたくさんの人に支えられて今がある。


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