天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

そう思い佐知に慌てて電話をかけるも、無機質な音声が繰り返される。

襲い来る喪失感は今まで味わったことがなく、ぽっかりと心に穴が開いた気がした。
大切な母が亡くなった時も、こんな気持ちじゃなかった。今、祥吾もこんな思いなのだろうか。
初めて感じる〝愛”。それがあるから一緒にいたいし、守りたい。そして触れたい。

こんな簡単なことに、今まで気づけなかった俺は大バカ者だ。
でも、俺はもう逃げるわけにはいかない。
これ以上、彼女に悲しい思いをさせることなどできない。
そんな覚悟とは裏腹に、佐知はその夜帰ってこなかった。

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