天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

その日、定時を少し過ぎたが一度車を置きに家に戻った後、私はお気に入りのワンピースに着替えた。

「佐知、よく似合ってる」

「ありがとうございます」
くすぐったくて照れ笑いをした私の手を握ると、コンシェルジュが呼んでくれていたタクシーに乗り込んだ。

「どんなお店ですか?」
タクシーの運転手さんには、あらかじめ行き先が告げられていたようで、何もいわないうちに走り出した。

「内緒」
その答えが返ってくる気はしたが、一応聞いてみた私は隣の龍一郎さんを軽く睨みつける。

「いつも内緒ばっかり」

「佐知はサプライズが好きだろ?」
私はそんなことを言ったことなどない。自分が素直に言えないのを私のせいにしているのだ。
しかし、それすらかわいい、そう思ってしまう私はどうしようもないのかもしれない。

「そういうことにしておきます」
すまし顔で言えば、龍一郎さんはクスリと楽しそうに笑った。その顔が見られるだけで私は幸せだ。

< 155 / 191 >

この作品をシェア

pagetop