天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~

「龍一郎、晴香はお二人にも連絡をしていなかったそうだ」
斎藤氏が説明するように言ったその言葉に、龍一郎さんは思い当たることがあるようで、小さく頷いた。

「なんだかんだ、元気に暮らしているものだと。私達も仕事仕事でそのうち連絡が来るだろうと鷹をくくっていた。それが……。先にこの世を去っているなんて」
昔は厳格だったのかもしれないが、今はもはやその面影はなく、憔悴しきっているように見えるお二人に、私はなんと声を掛けていいかわからず、龍一郎さんの手を握りしめた。

「昔から、ライバル会社であったから、二人を認めることなく晴香はもちろん、生まれてきた龍一郎にも苦労をさせてしまった。今更どんなに悔やんで詫びても、晴香は戻らないし、取り戻せないと思っている」

静かに龍一郎さんのおじい様はそう言うと、私達にもう一度頭を下げる。そんな二人に、龍一郎さんは少し思案した後、ゆっくりと口を開いた。
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