天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「本日はわざわざありがとうございます」
斎藤氏が頭を下げれば、そのご夫婦も静かに頷いた。
「龍一郎、こちらIZUMI自動車の会長ご夫妻だ」
IZUMI自動車と言えば、最近三洋自動車の業務提携を発表しニュースになっていたばかりだ。
かつてはライバル会社の提携はかなり世間を賑わしていたのを思い出す。そんな人がどうして? そう思って夫妻と龍一郎さんを交互に見ていると、男性が静かに私達をジッと見つめた。
「初めまして。和泉正孝と、家内の由紀子です」
その名前に私はようやくこの人たちが誰なのかを理解した。それは龍一郎さんも同じだったようだ。
目の前の女性は今にも泣きそうな表情で龍一郎さんを見ていた。
「あなたが龍一郎さんね……。本当にごめんなさい」
ポロポロと涙を流すその人は、ハンカチで目元を押える。
「母のご両親ですね」
色々なことが起こりすぎて、返って冷静になったのかもしれない。
龍一郎さんは静かに二人に問いかけた。