天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
「結婚なんてそんなものじゃないのか」
そんな思いで若林に言葉を掛ければ、ギロリと睨みつけられる。
「冷徹部長にはわかりませんよ!バーカ」
その言葉に唖然としつつも、なんだか意外な彼女の一面が面白くてしかたがなかった。
「へえ、じゃあどんな結婚したいんだよ?」
ついいつもの自分を忘れ、若林に声を掛ければキラキラとした瞳で夢を語る。
「一緒に朝食を食べたり、二人でゆっくりと家で映画をみたり、あっ、温泉も行きたいです」
そんなたわいもないこと。そう思いつつも、それが普通なのかもしれないとも考え直す。
俺の家はいわゆる母子家庭だった。『父親は亡くなった』そう聞かされていて、母は毎日俺の為に身を粉にして働いてくれていた。
貧しいながらも明るく愛情を掛けて育ててくれたと思う。そんな母親の為に料理も掃除も一通りこなせるようになったころ、元々身体が弱かったのだろう。
それを隠して働いていた母は、俺が高校に入学した年に他界し、初めて自分の実の父親の存在を知った。