天敵御曹司は純真秘書に独占欲を刻み込む~一夜からはじまる契約結婚~
それにしても後ろから抱きしめられていてよかった。もしも目を開けてすぐに目の前に彼のアップがあれば、確実に私は声を上げて飛び起きていただろう。
こうして少し落ち着く時間をくれたことが嬉しかった。
そんなことを思っていると、不意に視界が変わって目の前に龍一郎さんの顔がアップになる。
「ッ!」
びっくりして声を上げれば、真っすぐに私を見つめる龍一郎さんがいた。
「何を百面相してるんだ?」
あの朝と同じセリフを言われたが、龍一郎さんは笑っていて、フワリと私の唇にキスをする。まったく違う彼に、さっきまでの不安が一気に吹き飛んでいく。
「おはようございます。いつから起きていたんですか?」
少し拗ねて言えば、龍一郎さんは答えることなく私をギュと腕に囲う。
その温かさに私も彼の背中に手を回してしばらく二人で熱を分け合いあった。
「朝食を食べたらゆっくりと帰ろうか」
静かに聞こえた声に、腕の中で私は頷いた。