なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

専務秘書 坂元 伊織

「伊織は高校大学と同級生だった。優秀だから、僕が大学院に入る時にスカウトして秘書にした」

「大学院に通いながら仕事もしていたって事ですか?」

「そうだよ。早く仕事を覚えろって煩くてね」

「社長? お父さまがですか?」

「ああ。母さんも賛成してたしね」

「あの、紗弓さんって、お母さまの秘書って?」

「母さんは、ここの研究室で室長をしてた。今でも時々研究してる強者だよ」

「凄いですね。尊敬します」

「母が研究室相談役で、お義姉さんが秘書をしてる」

「紗弓さんは元々こちらで働いていたんですか?」

「いや。実家の病院で病院経営の仕事をしていた」

「そうなんですか」

「兄貴は副社長。優秀な男性秘書が就いてるから安心だろ?」

「まあ、そうですね。綺麗で色っぽい秘書なんかが一日中一緒に居るかと思うと気になりますよね。きっと」

「そうか?」

「えっ?」

「伊織で良かっただろう?」

「あぁ。坂元さんは優秀な秘書のようですよね」
他に何を言わせたいのよ……。

「後で秘書課に行けば分かると思うけど家は男性秘書が多い」

「そうですか」

「まぁ、女性の目線でしか気付かない所もあると思うから若干名は居るけどな」

「はい」

「中には茉帆を敵視して来る女性秘書が居るかもしれないが気にする事ないからな」

「敵視ですか?」

「僕は女性秘書たちに勘違いさせる様な事は何一つしてないから安心してろ」

「あぁ。はい……」
別に女性秘書には手を出すのが普通だとは思っていませんけどね。

 父にも就いて居るのは優秀な男性秘書だし。

 あぁ。常務は女性秘書だったな?
 常務もその秘書も苦手だったから話す事も避けてたけど……。


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