なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む
「君は兄貴が好きだったんだろ?」

「…………」

「でも、兄貴は結婚した。だから次は僕か? そんなに家に嫁に来たいのか?」

「ええ。そうよ。悪い?」

「兄貴が駄目なら僕っていう考えが理解出来ない」

「製薬会社の……。セレブの奥様になりたいって思っちゃいけないの?」

「それは僕じゃなくても良いんだよね?」

「玲於奈は私の事何とも思ってないの?」

「うん。ハッキリ言うよ。幼稚園からの幼馴染としか思ってない」

「私の何処がいけないのよ?」

「整形までして表面だけ取り繕っても、中身がスカスカな女なんかに誰が騙される?」

「…………」

「人に対する思い遣りや謙虚さ、心の美しさ優しさ。君には全く無い物だ。考えた事も無いだろう?」

「それは……」

「男は馬鹿じゃないんだよ。君の見た目だけに惹かれる男は、そいつも中身空っぽって事だ」

「酷い……」

「見た目だけに騙されてホテルに行っても、その場限りの付き合いで終わるのは、そう言う事だろ?」

「何でそんな事まで……」

「僕が知ってるかって? 大学生の頃から、そういう噂があった。相手がセレブなら誰とでも寝る女だってね」

「…………」

「違うなら言ってみろよ。僕の友人にも何人か居たな。見た目に騙された奴らが」

「こんな会社、辞めてやるわよ」

「どうぞ。男に媚び売るしか能のない秘書なんて必要ない。伊織。彼女の退職手続きを頼む」

「分かりました」

「パパに言いつけてやる……」
麗花さんはヒールの音を響かせて走り去った。

「本当、成長しない奴」


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