なぜ婚約者なのか説明書の提出を求む

「あそこまで言わなくても……」

「あれ位言わないと分からないんだよ。僕の許嫁とか言ってたんじゃないのか?」

「あぁ。確かにそう言ってたかな?」

「本気にしたのか?」

「ま、まさか……」

「あんな心のブサイクな奴に僕が惹かれるとでも?」

「整形だなんて知らなかったな」

「僕は自覚の全く無い天然美人に惹かれてるんだけど?」

「…………」

「伊織。まだ居たのか?」

「あぁ。はいはい。邪魔者は消えますよ。人事部行かなきゃな。面倒だな。全くもう……」

「おい」

「あぁ。今の発言は秘書としてじゃなくて友人としての発言だから……。じゃあ」

「フフッ。伊織さんて時々面白い人になりますよね」

「あぁ。友人としては面白いな。あれで秘書として有能なんだけどな」

「はい。良く存じております」

「さぁ。きょうはもう帰るか?」

「えっ?　お仕事はもう良いんですか?」

「伊織が優秀なんで、さっさと済ませてきた」

「そうですか。お疲れさまでした」

「たまには食事にでも行くか?」

「えっ?　良いんですか?」

「茉帆も疲れただろう。あんな女と一緒に居て」

「あぁ。いえ。大した事ないですよ」

「言いたい事を喚かれてもか?」

「まぁ。面倒な人に絡まれたなとは思いましたけど」

「ハハッ。茉帆らしいな」

「私らしいって何ですか?」

「うーん。意外と打たれ強いと言うか、根性据わってるというか」

「それ、褒め言葉として貰っておきます」

「褒めてるけどな?」

「じゃあ、ありがとうございます」

「茉帆と一緒に居ると飽きないな」