仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
人気のない木陰に来たユーリスは振り向き汗が止まらない男爵と対峙する。
「アーゲイド男爵」
「はっはい!」
「フローラ壌を傷つけ屋敷から追い出してしまったこと大変申し訳なく思っています。ここに深くお詫び申し上げます」
真剣な顔で言うとユーリスは深く頭を下げた。
先ほどのユーリスの様子からどやされるかと思いきや、まさか、いきなり頭を下げられるとは思ってもみなかった男爵は大慌てだ。
「ヒッ、ヒルト伯爵!頭を上げてください!娘も悪いところがあったと思います。こちらこそ申し訳ない」
「いいえ、フローラ嬢はなにひとつ悪いことなどありません。すべては私の不徳の致すところ。更に謝罪が遅くなり本当に申し訳ありません」
「いえ!いえ!いいですから。これ以上頭を下げられると困ってしまいます」
弱った男爵にようやく頭を上げたユーリスの表情はまだ硬い。
「差し出がましいと存じますが、フローラ嬢にも直接会って謝罪したい。ご令嬢は今どちらにおられますか?」
「フッ、フローラは、田舎に帰りました。今はもうそっとしておいていただきたいのですが」
「田舎に……では、アトロシカ領のご実家に行けばフローラ嬢に会えるのですね?」
「え?行くおつもりですか?あの、それは、向こうまで馬車で三日はかかりますしおやめになった方が……」
「馬で駆ければその半分で着きましょう。私はどうしてもフローラ嬢に直接会いたいのです」
「いや、でも、フローラはその……」
声が裏返り狼狽え渋る男爵にユーリスは尚も食い下がる。
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