仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
それは、数日前。
社交シーズンが始まり、続々と治めている領土から首都ロムバスに集まる貴族たち。
宮殿では皇帝主催の舞踏会が催され人脈を繋げ情報を交換する場となっている。
末端貴族も一度は皇帝に謁見できる唯一のチャンスだ。
貧乏男爵のフィリップもこの時ばかりは首都に赴き貴族社会で忘れ去られないように顔を出す。
今年は十七歳の一人娘、フローラが遅ればせながら社交界デビューを果たす。
通常十六歳からデビューできるが、それなりに資金がいるため調達するのに一年も費やしてしまった。
舞踏会で着るドレスも貧乏貴族とからかわれないよう立派な物を用意した。
フローラは社交界に興味はないようだが、母に似て美しくどこに出しても恥ずかしくない気品を兼ね備えてる。いずれ社交界で高位貴族の目に止まり、今のように苦労せず幸せな結婚をしてくれればと思っていた。
タウンハウスを持っていない男爵家はシーズン中はホテル住まい。
貧乏貴族ゆえにホテル代もばかにできないのだが屋敷を持つよりは経費もかからず大事な行事でもあるので背に腹は代えられない。
我が家所有の小さな馬車では荷物と一緒には来れないのでフローラは後から来ることになっている。
常宿にしているホテルに到着しほっとしていると、見計らったように客人が来たとフロントからの連絡が入った。
誰かと思えば、まさかの皇帝陛下からの使者で、陛下より会いたいとの申し出にフィリップは驚愕。
旅の疲れも癒えぬまま使者と共に皇帝の住まう宮殿に赴いた。
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