仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う

***

皇帝は客人を待つ間、窓から空を見つめ呟いた。
「今回こそは……」
あの彼の花嫁候補を選ぶようになって早七年。
今年選んだ令嬢の父親と対面するのを今か今かと待っていた。
皇帝が弟のように可愛がっている彼に相応しい令嬢がいないか吟味するのが毎年皇帝の使命(楽しみ)となっている。
下手な相手を宛がうわけにはいかないから事前の調査は欠かせない。
彼を利用しようとしない家柄と、見た目に惑わされず内面を見てくれる女性でなければ。
彼は優秀で実直、かなり毒舌なのがたまにキズだが、心根は優しく信頼できる男だ。彼の父がそうであったように愛した人はとことん溺愛するはずだ。
人の見る目だけはある皇帝が自信を持って言える。彼はいい男だ。
しかし、令嬢を見る目はないらしい。今まで七人も選出し七人とも彼の前から逃げ出してしまった。
彼に苦い思いをさせてしまったことは申し訳ないが、どうしても、彼に愛し愛される幸せを知って欲しいと思う。
それまではどんなに彼が迷惑そうにしていても、『ただ面白がってるだけでしょう』と詰られても諦めない。
(きっといるはずだ、彼を心から愛してくれる女性が!)
皇帝は拳を力強く握りふんと鼻息荒く気合を入れる。
さて、今年選んだ令嬢は彼の全てを受け入れてくれる心美しき女性だろうか?
晴れ渡る空にふたつの雲が漂って、それが次第にひとつになり大きなハート型になった。
これは、幸先いいのでは?と皇帝は気をよくして頬笑んだ。

< 3 / 202 >

この作品をシェア

pagetop