仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
アーゲイド男爵を見送っていると、チラチラと視線を感じまたひそひそと話し声が聞こえる。
「やはりあのご令嬢は婚約者なの?」
「ユーリス様のお傍にいれるなんてなんて羨ましい」
「どうせすぐに破談になるわ」
「私も婚約者候補に名乗り出てみようかしら」
自分のことを言われてるのだと気づいてフローラはなんだか居心地の悪い。
ユーリスを見上げればまた口がへの字口になって不機嫌な顔になっていた。
自分と一緒にいるのが嫌なのだろうかとフローラは不安になる。

「皇帝陛下のお出ましです」
侍従の声に皆一斉に入り口を見る。
登場した皇帝と皇妃の神々しさに皆息を呑んだ後、一斉に礼をして出迎えた。
皇帝が手短に開会の言葉を述べると音楽が鳴りだし中央ではダンスが始まり皆歓談しだす。
皇帝は玉座に座らずにユーリスに歩み寄った。
「なんだユーリス、その不機嫌な顔は」
「いつものことです、気にしないでください」
「そうはいかないだろう、フローラが不安そうな顔をしてるぞ?」
からかう皇帝にユーリスはむすっとそっぽを向いたが、フローラのことを言われて見ると彼女は困ったように苦笑いを浮かべ見上げていた。なぜそんな顔をする?とユーリスは首を捻る。
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