仮面の貴公子は不器用令嬢に愛を乞う
「女性を不安にさせるなんて、紳士失格ねユーリス」
「皇妃」
美しい栗色の髪を結い上げ色気漂う猫目の琥珀色の瞳、艶めかしい赤い唇が優雅に弧を描く。
気品を兼ね備えた美しい出で立ちの彼女は皇帝が溺愛するマリーベル皇妃だ。
皇帝と同じようにユーリスを信頼している皇妃は皇帝に倣って時々こうしてユーリスをからかい楽しんでいる。
皇妃には敬意を払うユーリスが礼をするのを見てフローラも慌てて礼をする。
「あなたがユーリスの婚約者のフローラさまね、とてもかわいらしい方」
「お初にお目にかかります皇妃さま」
にっこり笑った皇妃は女の直感というのかひと目見てフローラに好感を持った。
皇帝は皇妃の肩を抱きフローラを安心させるように微笑んだ。
「若き宰相補佐官殿は注目の的だからな。令嬢たちがこそこそ噂するからユーリスは舞踏会が嫌いなのだ。だから不機嫌そうな顔をしてるのは決してフローラ壌のせいではないぞ」
「え?」
フローラがそのせいで困った顔をしてるのかと初めて知ったユーリスはまじまじとフローラを見た。
それに恥ずかしくなってフローラは頬を染め俯いてしまう。
「ふ、ははは、なんともいじらしいなフローラ嬢。ほらユーリス、ぼけっとしてないでダンスに誘え、婚約者と最初に踊らないと後でフローラ嬢と私が踊れないじゃないか」
皇帝はユーリスに発破をかけ皇妃を伴いダンスの輪の中に入って行った。
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