地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~
 天真爛漫とも言える彼女の笑顔。

 俺や二人の総長の前では警戒で少し強張ってしまうそれが、最近ある一人の男子に対してだけまるで恋する乙女のような恥じらいを滲ませた笑みに変わる。

 久保幹人。
 《月帝》のNO.3。

「まさか彼を選ぶとはね……」

 二年前、名前も知らなかった彼女を離すまいと先走った行動のせいで、かなり警戒されてしまっている俺達。

 だから、ゆっくりアプローチするところから始めなければならなかった。

 でもそうしている間に久保は彼女との距離を詰めて行っていたらしい。


 しかも久保はいつの間にか変わっていた。

 女好きで、特定の彼女は作らず複数人と体の関係だけを続けるような男。
 いわば女の敵で、美来さんが好きになる要素なんてなかったはずだった。

 それがある日を境に一変する。

 体だけの関係の女たちとは一切会わなくなって、授業にも朝からちゃんと出席するようになった。
 ……まあ、ずっと寝ているみたいだけれど。

 そして何より、美来さんへの態度があからさまに変わる。

 初心(うぶ)で純情な乙女のような反応は、あまりの変わりように驚きはしたけれど正直見ている方は面白かった。

 久保のような男が本気で恋をしたらこうなるのかって。
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