きみと真夜中をぬけて




杏未へ



返事が遅くなってしまいごめんなさい。それから、文字に頼ったことを、どうか許してください。



手紙をずっと送り続けてくれてありがとう。私はずっと杏未からも現実からも逃げ続けていました。


1年前、はじめて杏未から手紙が届いた時、とても怖かったです。これまでずっと言えなかった私の悪いところや嫌いなところを書かれているのではないかと不安でした。

見ることができなくて、封を切ったのは今朝のことです。ずっと向き合うことができず、本当にごめんなさい。



手紙の中で、杏未はたくさん謝っていたけど、杏未だけが悪いことではないです。私の弱さとか、よくない部分とか、タイミングとか、そういうのが全部重なってしまったような気もします。
でも、自分だけがくるしかったのだと思うのはやめました。ずっとずっと、ひとりで引きこもっていてごめんなさい。


LINEを消してしまってから、杏未と繋がる手段を自分で断ち切っていました。向き合うことから逃げたのに、杏未から手紙がいつか来なくなるかもしれないことも怖いと思っていました。
月に一度、封を切らない手紙がリビングの引き出しの中で保管されていくことに、私も同じ時を過ごしている気持ちになれていたのかもしれません。わからないけど。


××××××@××××××.com
080-◯◯◯◯-△△△△



私のメアドと電話番号です。もしいつか、気が向いたら、ここに連絡をください。気が向かなかったらその時はその時です(私もずっと手紙の返事をしていなかったので人のことは言えない)



それから、参考程度にもうひとつ。

夕方か、夜(だいたい23時以降)、うちの近くにある公園に、ほとんど毎日います。私にとって、とても大切な場所だから。気が向いたらでいいです。

私はそこで、いつかを待ちわびて待ってます。



名生蘭


p.s.

レターセット、めちゃくちゃ可愛いです。特に7月に送ってくれたクリームソーダ柄のやつと、11月の 絵の具みたいなデザインのやつ。どこで買ったのか、もしよかったら教えてほしいです。





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