誘惑の延長線上、君を囲う。
「彼女出来たのかな?でも、全然、そんな素振りがないんですよね。連休前も普通に残業してたし、プライベートのスマホも気にしてなかったし。それに、暇な時はタブレットでゲームしてました!」

あー、確かにたまにゲームしている。モンスターを育成しながら敵を倒して、ダンジョンをクリアしていくゲームだ。相当なレベルまでやり込んでいる。私はゲームに興味が無いから、楽しいかは不明だけれど、日下部君にとっては大切な時間なんだよね。

「日下部君ね、学生時代はモテモテだったから、彼女が居ないのだとしたら不思議な位だよ」

「まぁ、顔面偏差値が高いのは認めますが、性格に歪みがありますからね。仕事中はガミガミうるさいし、細かいし。でも、それでいて、気配りしてくれるから女の子はキュンキュン来ちゃってたのかな?」

正にその通り。学生時代は完璧なまでの王子様だったから、バレンタインのチョコレートも沢山貰ってた。その中で、どさくさに紛れて『義理だから!』と言って無理矢理にチョコレートを押し付けた記憶がある。義理の割には手作りだったが、日下部君の友達連中にもカモフラージュであげたから、そのまま義理だと思われていただろうな。それもそのはず、お返しは何も無かった。

高橋さんの日下部君の仕事上の愚痴を聞きながら、会社へと到着した。高橋さんが面白可笑しく社内に入り、Иatural+の企画室へと向かう。

いざ企画室へと入ると待ち伏せをしたかのように、扉の入口付近に男性が立っていた。

「おはようございます、高橋さん、佐藤さん。一緒に出勤なんて珍しいですね」

「おはようございます。佐藤さんとはたまたま会ったので。ついつい沢山話しちゃったー」
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