誘惑の延長線上、君を囲う。
「陽翔君は、ど、……同棲?いや、同居してるって知ってるの?」

「知らないよ。……と言うか、家族の誰にも言ってない。そう言えば、琴葉の家族は知ってるの?」

私は、ブンブンと首を横に振った。結婚前の同居を私の両親が受け入れるとは思えないので、次の良さげな賃貸物件が見つかるまで友達宅にお世話になっていると伝えてある。

同棲は好きあっているカップルがするものだし、同居の方が、関係性がハッキリしない私達に相応しいと思ったので、言い直した。

「そうだよなぁ、その辺は見切り発車みたいに一緒に住んじゃったからなぁ……。近い内にキチンとしような。御家族に御挨拶をさせて下さい」

そのキチンととは一体……?彼氏でもないのに、どういう挨拶をしにくるの?それも気にはなっているが、それよりも目先の事をどうにかしなければならない。

「今日は私、ビジネスホテルにでも泊まろうか?」

連日、ダブルベッドで日下部君と一緒に寝ている。そんなだから、夜は流石に陽翔君が居るのに二人では寝づらいよね。

「ん?大丈夫だよ。琴葉は自分の部屋で寝て。俺は一人で寝るし、陽翔はソファーで寝てもらう」

日下部君が私に一部屋貸してくれてるけれど、寝る時はいつも日下部君のベッドだから、あまり使用していない。部屋に布団もあるし、明日も仕事だから今からビジネスホテルに向かうのはキツイし、日下部君の言う通りにしようかな?

「陽翔君には申し訳ないけど、ソファーで寝てもらうしかないか……」

「だな。だって、二人で抱き合って寝てるベッドに寝せる訳にいかないじゃん」

ボソボソと私の耳元で呟く日下部君。聞こえた言葉で顔が真っ赤になり、耳まで熱を帯びる。
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