誘惑の延長線上、君を囲う。
新たな居場所
日下部君との同居を解除するべき、私は賃貸を探していた。職場から程近い所が良いけれど、手頃な相場の賃貸が見つからない。

「今日はごめんなさい、お休みなのに……」

「佐藤さんの頼みならば、直ぐに駆けつけますって!」

目の前の爽やかイケメンは、以前、住宅メーカーで勤務していた時にお世話になっていた営業マンの伊能さん。手頃な相場の賃貸が見つからない為、住宅関連で良い不動産があるかを伊能さんに聞きたくて仕事帰りに待ち合わせをした。本当は伊能さんが休みの日ではなく、別の日にしたかったのだが、仕事上の都合も合わずに今日になった。

「そうそう、佐藤さんが僕に譲ってくれたMさんなんですが、超豪邸を建ててくれる事になったんですよ。お陰様で成績も上場です。本当にありがとうございます!」

「ううん、こちらこそ、感謝してます。伊能さんならば引き継ぎを安心して任せられるって思ってました。ちなみに他の人にはあげたくない好条件の案件だったから伊能さんに引き継ぎ出来て良かった、……てのもあります」

伊能さんは私の仕事上の先輩社員だった方で、優秀な人材そのもの。年齢は私よりも二つ下だけれど、上司や部下、顧客からも信頼が厚い。
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