誘惑の延長線上、君を囲う。
「……と言うか、突然辞めてしまって申し訳ありませんでした!ずっと謝りたくて……!今日、直接会ってご挨拶が出来て良かったです」

伊能さんにお世話になったのに、仕事を辞めてからは電話とメールのやり取りだけで済ませてしまい、直接会ったのは今回が初めてだった。

伊能さんが話をしようと口を開いた時にオーダーしていたコーヒーが届いて、口に含んでから私に話しかけた。

「僕も会えて良かったです。久しぶりに会って話せて嬉しいですよ」

伊能さんは少しはにかんだような笑みを浮かべ、後から届いたワンプレートの料理を食べ始める。このカフェはワンプレートが売りで、サラダ、メイン、サイドメニューから、それぞれ好きな物が一品ずつ選べる。伊能さんはメニューの中からオムライスとチキンソテー、シーザーサラダが一緒盛りのワンプレートを選んだ。私はその他は同じで、シーザーサラダではなく、和風サラダにした。

「ここのオムライス美味しいですよね。でも、カフェだから大盛りにしても少ない感じがします」

「まだ食べてないから、私の分を是非どうぞ。ここに乗せちゃっても良いですか?」

「わ、すみません!こんなに頂いたら佐藤さんの分が……」

「良いんです。私は帰ってから、お酒も待ってますんで、良かったら食べて下さいね!」
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