誘惑の延長線上、君を囲う。
「琴葉と一緒に入る朝風呂、癒される。そうだ、今度、温泉に泊まりに行くか?出張の日は金曜日だから、そのまま宮城に泊まろう」

「もう、何でも勝手に決めちゃうんだから!」

出張は一月中旬で確かに金曜日だ。新しく出来た店舗の視察に行く目的だが、基本は直帰なので泊まっても問題は無い。

「ようやく正式に付き合ったんだし、別にいいだろ。もう誰にも隠さなくて良いし、恋人生活を満喫する」

湯船の中で日下部君の方に抱き寄せられ、隣同士にくっついて座る。日下部君は静かに入りたかったのか、ジャグジーのスイッチを消した。

「じゃあさ、結婚したらどうするの?新婚生活は満喫しないの?……と言うか、もうさ、ごぢゃ混ぜじゃない?私達の生活」

「うるさいな、新婚生活は新婚生活でやる事あるでしょ!」

「やる事?新婚旅行とか?」

「それもあるけど……、子作りだよ」

「こづ……、ん、」

日下部君の濡れた前髪が私の額に触れて、水滴が冷たい。口を日下部君の唇で塞がれて、口内の粘膜が合わさる音がバスルームに響く。
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