誘惑の延長線上、君を囲う。
昨日の夜も二回したのに、これで三回目だ。本当にどうしちゃったのだろう、日下部君は?

「……お腹空いた。朝から運動したからかな?」

備え付けてあるスティックコーヒーをコーヒーカップに入れながら、呟いた日下部君。

「日下部君のバカッ!朝は嫌だって言ったのに!」

暴走した当の本人は聞こえないフリをして、コーヒーカップにお湯を注いでいる。私の分も淹れてくれて、ベッドまで運んできた。

昨日といい、今日の朝といい、流されるままに時間は過ぎてしまい、気付けば昼過ぎだった。バスルームからベッドに連れてこられた私は行為の後、またもや寝てしまったらしい。

「だって、琴葉が可愛かったから仕方ない」

「そ、そんな事を言っても信憑性に欠けるからね。もう!」

私はコーヒーを飲んだ後、そそくさと帰る準備をする。システムがよく分からないが、もう昼過ぎだし延長料金とか取られるんじゃないのかな?

「あー!」

鏡を見たら首筋にまで跡がついていた。マフラーで隠すしかないが、生憎、マフラーは持ち合わせて無かった。「どうした?」

「どうしたもこうしたも無いでしょ!首にまで跡がついてるし、隠せないし……!どうしよう……!」

私の声を聞いて、傍に寄って来た日下部君。

「琴葉は俺のモノだって証なんだから、気にするな」

妖艶な笑みを浮かべて、赤い蕾の痕をなぞる様に首筋に唇を触れさせた。日下部君が近付く度に鼓動が早くなる。
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