誘惑の延長線上、君を囲う。
「腕枕……、腕辛くない?」

抱きしめられながら、腕枕をしてくれた。日下部君の吐息がかかる距離で心臓の音も聞こえる。

「大丈夫、辛くなったらどけるし。あっ、ヨダレ垂らすなよ!」

「もうっ、うるさいなぁ!……日下部君に一生言われそうでヤダ」

ぷうっと膨れ顔をすると日下部君に頬をムギュっと摘まれた。目が会うとお互いに笑ってしまう。恋人みたいで恋人ではない、距離感。日下部君の気持ちがこの場所になくても、今だけはその事を忘れていたい。

おやすみのキスをされ、眠りについた。幸せをめいいっぱいに感じながら明日を迎える。

───翌日、目が覚めたら、昼を過ぎていた。

「おはよう」

「お、おはよう。ごめんね、寝過ぎちゃった……」

「仕方ないよ、連日、沢山イチャイチャしたからな」

「朝から、その話題止めて……!」

日下部君は先に起きて、コーヒーを飲みながらタブレットのゲームをしていた。日下部君もゲームするんだなぁ……と思いながら、洗面所に向かおうとするとお腹がぎゅるる…と大きく鳴り響いた。

「ご、ごめんね、……き、聞かなかった事にして!」

「ははっ、朝飯抜きだから腹減ったよな。昼飯、食べに行こう」恥ずかしい、恥ずかしい!ヨダレの次はお腹の音!日下部君に笑われた。まるで子供みたいじゃない!私の中の完璧主義者の委員長はどこに行ったの?と言う位に、日下部君と再開してからは駄目な部分ばかりが浮き彫りになる。

洗面所で己の落ち度を反省するようにバシャバシャと顔を洗う。日下部君の前では堕落したくないのにな、どこからか綻びが出てきてしまう。
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