誘惑の延長線上、君を囲う。
「もう、いい加減に呼んでくれる?我慢も限界なんですけど?」

それはそっちの勝手な都合でしょ?と思いながらも、見つめられる事に耐えきれずに私はついに観念した。

「……ふ、ふみ……や君……」

照れくささから日下部君の手を押しのけて、胸元に顔を埋めながら呟いた。

「その初々しい感じ、正直、……ヤバイ。わざと煽ってる?」

胸元から引き剥がされて、無理矢理に顔を上げられる。だかしかし、見上げた先には日下部君の真っ赤な顔があって微笑ましくなった。

私達、付き合っても居ないし、友達からの延長線だからお互いの名前を呼び合うのも一苦労。気恥しくて堪らないのだ。

その後、私達は身体を重ねて、そのまま眠りについた───……

目が覚めたら、日下部君は隣りに寝てなかった。頭が重いし、喉が焼け付いたようにカラカラだ。ベッドから出たくない気持ちを余所に、無理にでも身体を動かしてキッチンへと向かった。

冷蔵庫の中にあるペットボトルの水を喉に流し込み、リビングに目を向けるとソファーに横たわる日下部君が居た。日下部君はタブレットのゲームを付けたまま、うたた寝していたようだ。冷房が程良く効いている部屋の中は、うたた寝には最高である。

日下部君は眠って居る時も、整った綺麗な顔立ちをしている。中性的ではないのだが、目鼻立ちがハッキリしている。モデルとか俳優とかでも通じそうな位なのに、彼女が居ないなんて残念な人だ。決して性格も悪くないのに……。

付いたままのタブレットを消そうと日下部君に手を差し伸べた時、うっすらと目を開けた。
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