誘惑の延長線上、君を囲う。
お肌が荒れてないとはいえ、年齢はどうする事も出来ないし、秋葉さんみたいに女性らしくも振る舞えない。私の外見は女性だとしても、内面はおじさん寄りなのかもしれないよなぁ……。カフェよりも居酒屋大歓迎だし、一人でラーメン屋も構わず入れるし。秋葉さんなら、きっと一人でしない事も私は一人でも出来る。秋葉さんと比べる事が間違っているのかもしれないが、どうしても比べてしまう。

自分とはどこが違って、どういう所が日下部君が好きなのか、想像する。答えは明確だから、比べなくても良いのにね……。

カタンッ。

日下部君が戻って来て、ロックグラスをテーブル上のコースターに乱暴に置く。ロックグラスに注がれている透明な液体がテーブルに飛び散った。

「な、何を怒ってるの……?」

恐る恐る尋ねる。

「怒ってない」

「いやいや、怒ってるでしょ?」

日下部君は明らかに顔がムスッとしていて、私の方を見ようともしない。原因は私自身だと知っているけれど、私はあくまでも知らない振りをする。
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