嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「つきを、我の妻に頂きたいと仰せだった。」

そんなふうに言ったのね。

ちょっと感動しちゃった。

「だが、私達はお断りをした。」

私は、ズルッと手を床に着いた。

「待ってと言ったのでは?」

すると両親が、はあ?という顔をする。


「どうして、私達が言った言葉を、つきが知っているの?」

「ははは。何となく。」

誤魔化している場合じゃない。

「どうして、お断りしたの?水神様のお申し出なのに。」

「つきは、一度戻された。水神様に気に入られなかったという事だ。それを畏れ多い事に、もう一度差し出してどうする?」

ああ、やっぱりひっかかるのは、そこの部分なのね。

やっぱり、戻らなければよかった。


「お父様、お母様。」

「ん?」

私は、覚悟を決めた。

「つきは水神様の妻になります。私を生贄に差し出して下さい。」

そして、頭を下げた。
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