嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「急に、夢に出てきて、”娘を妻に迎えたい”?いくら水神様だとて、卑怯だろ。」

神様に向かって、卑怯だなんて。

もしかしたら、るか様怒ってしまうかも。

「ふふふ。お父様、そう言われる日を、楽しみにしてましたもんね。」

お母様が、微笑む。

「そうなの?お父様。」

するとお父様は、ムスッと不機嫌そうな表情をした。

なんだ。

ただ単に、断りたい訳じゃないのね。


「いいでしょう?お父様。私も水神様に嫁ぎたい。今度は、戻って来ないように、しっかり役目を果たすから。」

その瞬間、お父様の目から、涙がほろりと流れた。

「せっかく帰って来たと言うのに、また生贄になるとは。なんて馬鹿な娘だ。」

「本当にねえ。」

でもお母様は、嬉しそうだ。

「でも、相思相愛で夫婦になるのは、幸せな事ですよ。お父様。」

お母様が宥めてくれたお陰で、お父様はようやく納得してくれた。

お父様。

ごめんね、馬鹿な娘で。

そしてお母様、ありがとう。
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