嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
涙を流しながら、叫んでいた。

「とき、気にしないで。私は水神様に乞われて、嫁に行くのだから。」

「つきー!」

とき。はやてと幸せになってね。

そう願わずにはいられなかった。


そして長い森の中の道を抜けて、私達は湖のお社の前にやってきた。

「一度、休憩しよう。」

お父様の掛け声で、みんな座って休む。

そんな中、岩の上に腰を降ろす私に、お父様が側に来た。

「つき。飲もう。」

「えっ?」

お父様は、盃にお酒を注ぐと、私に渡してくれた。

「よく考えれば、おまえと酒を飲む事もなかった。今生の別れに、おまえと一緒に酒を飲もうと思ってな。」

「お父様……」

私は渡された盃で、クイッとお酒を飲んだ。

盃を空けると、またお父様はお酒を注いだ。

「あまり飲むと、る……水神様に飽きられてしまうわ。」

「水神様がなんだ。わしの娘の婿になるんだ。それくらい許せよ。」

ふふふと、私は笑った。

「水神様が婿になるなんて、素敵よね。」
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