小さな恋 大きな愛

恋心

美里は洗面所へ行きグロスを取り出した。(あれ?グロス塗らなくても唇テカってる)

そんなことより鏡を見ながら美里は思った。そういえば年も知らない、名字も住む所も知らない。知らないことだらけでこんなに楽しくて…智輝の笑顔が自分を安心感させてくれる。
いつの日が智輝の笑顔が一番の精神安定剤になっていた。

洗面所から出ると会計が済まされて智輝はドアの向こうで足でリズムを踏みながらガムを噛んでいた。
「あっごめんなさい…会計…」美里が財布を出そうとした時
「美里ちゃんたくさん食べてくれたから全部タダになった!」
「えーなにそれ〜?」
「いいのいいの気にしないで俺超〜楽しかったしあんな旨い肉食べたの初めて!マジだよ」
「…じゃあごちそうさまでした」

二人は歩き出した。
「次はいつ会えるかな?」智輝ははにかみながら言った。
「わたし病院の日以外ならいつでも…あっ……!」
口を滑らせてしまった。
「え?病院?美里ちゃんどこか悪いの?」立ち止まって心配そうに智輝が言う。「あ…うん…んとね…」
沈黙の横で酔っぱらいの大学生が数人大きな声ではしゃいでいる。
美里はその声の大きさに立ちすくんでしまった。
「美里ちゃん……大丈夫?とりあえず静かなとこ行こう」
智輝に支えられながら静かな路地を歩いていた。
「大丈夫?」心配顔の智輝。美里は言った。
「実はわたし病院に通っててあの…精神科なんだ…」智輝は真剣な顔になった。(嫌われるかな?変に思われるかな?もう会えなくなっちゃうのかな?それでもいい、仕方ない事実だから)
「美里ちゃんなんか言いたくなかったら無理して言わなくていいよ」
「ううん、トモにはちゃんと話す……」
智輝は美里の病のことを聞いて
「俺、病のことは解らないけど大変だね、早くよくなるといいねってごめん軽率で…でも大丈夫だよー!絶対治るから!」
返ってきた言葉に少し驚いた。なんて前向きなんだろう、しかも優しい言葉だった。

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