愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
 父さんはさっきまで声を上げるなって言っていたのに、俺が悲鳴を上げてるのをとても楽しそうに見ていた。
 なんでだよ。
 虐待をしてるのがバレるのを防ぐために、声を出すなって言ったんじゃないのか?
 それならなんで、俺が叫んでんのを見て笑ってんだよ。俺がうるさくしたら、虐待がバレるのに。

「そうか、痛いか。じゃあ、もっと苦しめ」
「ヴ、アアアアッ!!!」

 聞くに耐えない断末魔が、路地裏に響き渡る。
 筋繊維の奥にある骨を溶かすかのような勢いで、煙草の火を押し付けられた。ジュウッなんて音がして、ことさら強い痛みと、ものすごい熱に襲われる。

「とっ、父さん、なんで。俺が悲鳴を上げたら、虐待がバレるんじゃないの?」
 それなのにわざと悲鳴がでかくなるようなことをしてどうすんだよ。本末転倒だろ。
「あははははは! そうだよな、お前はそう思うよな」
「え?」
「残念。さっきのコンビニ、工事中だっただろ?」
「あっ」
 工事の音で、悲鳴が消えるんだ。
「じゃあ声を上げるなって言ったのは……」
「ああ、必死で声を我慢するお前を見たかっただけだよ!」


「なんだよそれ……」
 ただ俺の反応を見るためだけに、声を上げるなって言ったのか?
 なんだよその玩具みたいな扱い。
 俺がどんな気持ちで、父さんの意向に従ったかも知らないくせに。俺はあんたを怒らせないためだけに、必死で悲鳴を出すのを堪えたのに。


「あははは。その顔、滑稽だな」
 押し付けられている煙草を上下に動かされる。虐待のあざができているとこに煙草の火が当たった。
「いっ!……父さん、なんでこんなに傷つけんの?」
「お前を弱らせたいからだ」
「……こんなに虐待の跡を作ったら、俺が死んだ時に虐待を疑われるよ?」
「お前が車に轢かれれば、疑われずに済むだろ。そうすれば損傷が激しすぎて、虐待の傷か死んだ時の傷かなんてわからなくなる」
 最悪だ。言ってることが酷すぎる。

 二分くらいで火が消えると、父さんはやっと煙草を押し付けるのをやめた。

「はっ、はぁっ、はぁ……」
 肩が痛すぎて、死ぬ。

「息をかけるな。気持ち悪い」
 父さんは煙草を地面に投げ捨てると、俺の腹を渾身の力で殴った。

「ぐっ!?」
 口から漏れた唾液が、父さんの服にかかる。
「……汚い。お仕置きだ」
「いっ⁉ あああぁっ!!!」
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