愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
火傷した鎖骨を、爪で引っ掻かれた。どろどろと血が流れて、余りの痛みにまた悲鳴が出た。
「父さん、飯……抜かないでっ。俺、お腹がすいて……」
涙を流しながら、掠れ声で懇願する。
「腹が減ってるから抜かないで欲しいのか? もの凄い我儘だな。何様のつもりだ?」
いやなんでそうなった。別に我儘じゃないだろ。
父さんは俺の胸ぐらから手を離すと、足元にあったガラスフィルムのかけらを拾って、不敵に笑った。
一体何をするつもりだ。
「海里、ガラスっていいよな。尖ってて」
父さんはもう一度、俺の胸ぐらを掴むと、あろうことか、持っていたフィルムのカケラを俺の鎖骨に勢いよく突き刺した。
「いっ!!」
本当に玩具みたいな扱いだ。
……いや、みたいではない。
父さんは俺を正しく玩具として扱って、暴力を振るうたびにものすごい痛みと熱に襲われて声を上げる俺を見ながら、悪魔のように笑った。それはまるで、いじめを心の底から楽しんでる子供みたいに。
俺は痛みと熱で荒ぶる心臓の鼓動を、何度も呼吸をして必死で整えた。
「はぁっ。とっ、父さん、もうやめ……いっ!!!」
刺さっているガラスを左右に振り回される。
やめてって言いたかったのに、声にならなかった。
「ククク。痛いか?」
顔をゆがめて苦痛に耐える俺を見て、父さんは喉を鳴らして笑った。
……痛いなんてもんじゃない。そんな三文字の言葉ではとても現しきれないくらい苦痛だ。実の親にこんなことをされるのは。
本当に地獄でしかない。
「もう一回チャンスをやる。これで声を上げなかったら、飯は抜かないでやるよ」
父さんは俺の胸ぐらから手を離してガラスを抜くと、足元にあるカップラーメンを拾い上げた。そして、それの容器を密閉するために貼ってあったテープを外した。
マズい。
きっと、中身を腹か胸にぶちまけるつもりだ。
「とっ、父さん、それはやだ」
これ以上火傷はしたくない。
俺は震えながら、後ろに下がった。
父さんはじりじりと距離を詰めてきた。
「お前に拒否権なんてないんだよ」
壁が真後ろにせまるところまで俺を追い詰めると、父さんは笑いながら、カップラーメンの容器をゆらゆらと揺らした。
「父さん、でもそれ今使うなら、俺のお昼は?」
「あ? これがお昼だよ。自分にかかったスープと具と麺を舐めて、腹を満たせよ」
「俺は犬じゃない」
「ああ、お前は犬じゃない。俺の奴隷だよ」
奴隷。
心臓が痛い。まるで、握りつぶされているみたいだ。