愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
八章 人形はただの我儘な子供と一緒に生きることにした。
 
「海里、今日の収穫は?」
「なし。警察も手がかりはないって言ってた。そっちは?」
「ごめん、うちらもない」
 美和の言葉に合わせて奈緒が首を横に振る。
「そっか」
 そういうと、俺は顔を伏せてぎゅっと拳を握りしめた。

 三月十日、冬。
       
 高校の卒業式を終えた俺は、奈緒と美和と一緒に江ノ島に来ていた。
 俺は零次を探すのが目的じゃない遠出なんて学校以外に全くする気にならなかったけれど、江ノ島なら唯一行ってもいいと思えたから、二人に無理言ってそこにしてもらった。
 もう零次がいなくなってから、二年が過ぎてしまった。
 あいつの身体の残りは、まだ見つかっていない。
見つかっているのは、あの脚のみだ。他の身体はてんで見つからなかった。
 そのせいで金を返してもらえなかった零次の父親は荒れに荒れて、闇金の仕事をやめてニートとして生活するようになった。要はあの父親は息子が死亡している可能性が高いとわかってから、かなり堕落した生活を送るようになったんだ。
 必ず見つけ出すと言っていた割に、二年でそいつは諦めた。

 意外と諦めが早かった。俺と違って。

 俺が零次の父親がニートになったのを知ったのは、親父の借金の保証人をしてたじいちゃんから、零次の父親が会社を畳んだと聞かされたから。
 じいちゃんは弁護士に依頼をして親父の借金の問題を、きちんと法的に解決してくれた。
 じいちゃんがそうしたのは、孫の俺を守るためだった。
 俺の親父は今刑務所にいるけど、懲役が十年だから、後八年で帰ってきてしまう。
 そうなったら俺はまた暴力を振るわれる可能性がある。じいちゃんはそんな俺を守るために借金の問題を解決するだけでなく、高校を卒業したら、俺と母さんとじいちゃんとばあちゃんの四人で、じいちゃんとばあちゃんの家がある千葉で暮らそうと言ってくれた。

 父さんは決まって俺が一人の時に虐待をしていたから、四人で暮らしていたら、俺が一人になるのはせいぜい大学の送迎バスが止まるバス停に向かうまでの間と、送迎バスから降りて家に向かうまでの間くらいだから。

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