愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
涙を流しながら零次を睨みつける。
悲しくもなければ、嬉しいわけでもない。ただただ、悔しかった。こいつが自分を大切にしてないことに身投げしてから気づいたのが、悔しくて仕方がなかった。
「……ハハ、やっぱ気づいたか」
力なく、お手上げだとでも言うように零次は笑う。
「気づいたかじゃねぇよ! なぁ、俺がどんな気持ちでお前を探してたかわかるか? 俺はお前が俺を守るために身投げしたのを認めたくなかった。だってそれを認めたら、お前が自分を大切にしてないことを認めることになるから。お前は俺に自分を大切にしろって言っておきながら、自分じゃなくて、俺の命を選んで身投げをした。俺はそのことをどうしても認めたくなかった!!……お前の口から直接、俺を守るために身投げをしたんだよって言葉を聞かない限りは。心のどこかではずっと、他に理由があるわけないって、他に理由があったら、奇跡だと思ってた。それでも零次の口からその言葉を聞かないと、どうしても納得できなくて!!!」
こんなのただの我儘だ。でもその我儘が、俺が零次を探し続けた最もの理由だった。
「……海里」
零次は俺を守るために身投げをしたとは決して口にせず、切なそうな顔をして、ただただ俺の頬を触った。
零次はそうして、俺のためにさも他の理由があるかのように振る舞った。
零次のその優しさが残酷で、辛くて、苦しくて、滂沱の涙が溢れ出す。
「俺はもう全部知ってんだ! お前が昔、どんな奴だったかも、お前が、大嘘つきだってことも! 何が俺に外の世界の楽しさを教えるだよ! お前はただ、俺より半年だけ早く外の世界を知っただけだろうが! それでよくもまぁ外の世界が楽しいなんて言えたな? 自分の意思を殺すな? 人形になるな? お前だろ、自分の意思を殺してたのは! ずっと父親の操り人形だったのは!! お前は、一人暮らしをするまで、吐き気がするほど酷い現実を壊そうともしないで、俺みたいにやめてって言いもしないで、ただただずっとあの車の中から、なんの意思もない空虚な人形のような目で、外を見てたんだよ! そんなんだったからお前は俺と同じように、自由を手に入れた後もちゃんと自分を大切にすることができなくて、身投げをしたんだよ!」
悲しくもなければ、嬉しいわけでもない。ただただ、悔しかった。こいつが自分を大切にしてないことに身投げしてから気づいたのが、悔しくて仕方がなかった。
「……ハハ、やっぱ気づいたか」
力なく、お手上げだとでも言うように零次は笑う。
「気づいたかじゃねぇよ! なぁ、俺がどんな気持ちでお前を探してたかわかるか? 俺はお前が俺を守るために身投げしたのを認めたくなかった。だってそれを認めたら、お前が自分を大切にしてないことを認めることになるから。お前は俺に自分を大切にしろって言っておきながら、自分じゃなくて、俺の命を選んで身投げをした。俺はそのことをどうしても認めたくなかった!!……お前の口から直接、俺を守るために身投げをしたんだよって言葉を聞かない限りは。心のどこかではずっと、他に理由があるわけないって、他に理由があったら、奇跡だと思ってた。それでも零次の口からその言葉を聞かないと、どうしても納得できなくて!!!」
こんなのただの我儘だ。でもその我儘が、俺が零次を探し続けた最もの理由だった。
「……海里」
零次は俺を守るために身投げをしたとは決して口にせず、切なそうな顔をして、ただただ俺の頬を触った。
零次はそうして、俺のためにさも他の理由があるかのように振る舞った。
零次のその優しさが残酷で、辛くて、苦しくて、滂沱の涙が溢れ出す。
「俺はもう全部知ってんだ! お前が昔、どんな奴だったかも、お前が、大嘘つきだってことも! 何が俺に外の世界の楽しさを教えるだよ! お前はただ、俺より半年だけ早く外の世界を知っただけだろうが! それでよくもまぁ外の世界が楽しいなんて言えたな? 自分の意思を殺すな? 人形になるな? お前だろ、自分の意思を殺してたのは! ずっと父親の操り人形だったのは!! お前は、一人暮らしをするまで、吐き気がするほど酷い現実を壊そうともしないで、俺みたいにやめてって言いもしないで、ただただずっとあの車の中から、なんの意思もない空虚な人形のような目で、外を見てたんだよ! そんなんだったからお前は俺と同じように、自由を手に入れた後もちゃんと自分を大切にすることができなくて、身投げをしたんだよ!」