愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
「だからなんだよ! お前のは全部憶測なんだよ! 何もかもやる前に諦めてんじゃねえよ! お前は俺の人生を絶望的な状況から、一気に最高のものにしてくれた! それなのに自分の人生は少しも良くしようとしなかったのか?」
零次の胸ぐらを掴んで、俺は叫んだ。
「ああ、そうだよ。虐待の動画を渡しさえすれば、全て解決すると思ってたから、それまではどんなことをされても我慢しようと思ってた。でもお前と仲良くなって、動画を親父に渡すことができなくなって、自由を手に入れなくなったから身投げをした」
そうだよなんて、我慢してたなんて言わないで欲しかった。
だって俺は零次から我慢しないことを教わったも当然だから。それなのに当の零次が我慢ばかりしてたなんて、考えたくもなかった。
「なんで。俺には散々反抗しろって言っといて、お前はっ!!」
「だからこそだよ」
「は?」
零次の胸ぐらを掴んでいる手から力が抜ける。
「俺は地獄を知ってた。反抗しなかったら、どうなるのかを。お前にだけは、どうしてもそれを味わって欲しくなかった。俺はお前を通して、昔の自分を救おうとしてたから。……俺は父親に反抗しないで人形に成り果ててた自分に、心苛立ちを感じていた。弱虫で、父親の言いなりになってばっかの自分が、心の底では、憎たらしくて仕方がなかった。その気持ちを捨てられたら、お前を通して自分を赦せたら、やっと自分を大切にすることができるんじゃないかって、そう思ってた」
「過去の自分を、赦す?」
「ああ。過去の自分を赦さないと、親父に反抗できないたびにだから自分はダメなんだって思っちまうから。そう思うのをやめない限りは、自分を大切にできないだろ?」
確かに、それはそうなのかもしれない。自分はダメだと思ったら、自分には価値がないと結論づけてしまったら、その途端に人は自分を大切にできなくなってしまう。
俺もそうだった。
雷の日に親父に手足を縛りつけられて、それを母親に助けてもらえなくて、自分はそういう人間なんだと、誰にも大切にされてないんだと、自分は価値のない人間だと思ってしまったから、自分を大切にできなかった。