愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
毎日毎日苦しめられて、痛みに唸るハメになるくらいなら死にたい。
自殺したい。
永遠にあんな地獄を味わうハメになるくらいなら、さっさと死にたい。
俺は本気でそう思っている。
「……ハッ。本当にそう思ってんのか? 嘘じゃないか?」
阿古羅は手を離して、俺を小馬鹿にするみたいに笑った。
「そんなことない! 俺は本当に死んでいいと思ってる! 死ぬのなんて怖くない!」
「じゃあなんで俺に感謝した? 本当は死にたくないと思ってるからじゃないのか?」
「それは……っ!」
何故か、理由を言えなかった。
「本当に死にたいと思ってるなら、俺に感謝しないよな? それどころか助けた俺を恨むんじゃないか? そうだよなぁ? だってあのまま虐待を耐えてたら、お前は死ぬことができたかもしれないんだから」
阿古羅の言葉が、鋭いナイフのように俺の心を射抜く。
その通りだ。
確かに俺はあのまま虐待に耐えていたら、死ぬことができたかもしれない。
あのまま耐えていたら、俺はプライドをズタズタにされて、身体を身動きがとれなくなるまで滅茶苦茶にされた後で道路に投げ出されて、車に轢かれて死ぬことができたかもしれない。
そんなの考えればすぐにわかることなのに。それなのになんで俺は、俺を生かそうとした阿古羅に感謝したんだ?
そんなのまるで、俺が助けられたことにほっとしたみたいじゃないか。
死にたくないと思っているみたいじゃないか……。
阿古羅は何も言わない俺を見てため息をついてから、ハンカチを流し台の上に置いて、鞄からはさみを取り出した。そして、はさみの刃を俺に向けた。
思わず目を閉じて縮こまる。
……怖い。
怯える俺を見て、阿古羅はため息をついた。
「ほら、怖いだろ。刃物向けられたら、死にたくないって、怖いって思うだろ。それがお前が生きたいと思っている証拠だよ」