愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
「あ!」
俺は思わず声を上げた。
「ふふん。どうだ? 上手いだろ? ちゃんと見てろよ」
阿古羅がとても自慢げな様子で言う。
どうやらUFOキャッチャーには相当自信があるらしい。
アームはそのままぬいぐるみを景品が出る穴の真上まで連れて行った。そしてぬいぐるみを、穴の中に勢いよく落とした。
そうなったのとほぼ同時に、俺のスマフォが音を立てた。ポケットからスマフォを取り出してみると、父さんから電話がきていた。
マズい。
帰んないと。
阿古羅がぬいぐるみを持ってない方の手を使って、俺からスマフォを奪う。
「えっ。阿古羅何すんだよ!」
慌てて取り返そうとすると、阿古羅はスマフォを上下左右に器用に動かして、俺の手を避けた。
完全にもて遊ばれている。
「阿古羅!」
腹が立って、俺は阿古羅を思いっきり睨みつけた。
阿古羅は俺に目もくれず、スマフォを片手で器用に操作する。
「零次!!」
名前で呼んだ瞬間、阿古羅の手が止まった。
「やっと名前で呼んだな?」
俺にスマフォを返すと、阿古羅はとても満足そうに笑った。
もしかして、名前を呼ばせるのが狙いだったのか?
思わず頬がかあっと赤く染まる。――ハメられた!
「うっ、うるさい」
阿古羅から目を逸らして、拗ねるみたいに唇を尖らせる。
なんで名前を呼ばせるためだけにスマフォを奪ったんだよ。
「あ」
父さんからの着信が切れていた。
余りの出来事に寒気を覚える。
これが本当の狙いだったのか。
「通話なら拒否しといた。今は忘れろ父親のことなんか」
「で、でも早く帰んないと」
「帰っちゃダメにゃー」
ぬいぐるみを俺の顔の前にやって、阿古羅は言う。
「ガキか」
呆れながら呟く。
こんなこと、小学生でもやらねえよ。
「ガキはお前だよ馬鹿が。言っただろ父親に反抗しろって。それなのになんで今帰ろうとすんだよ」
頭をぬいぐるみで軽く叩かれる。
ぬいぐるみで叩かれるのは怖いとは思わなかった。ぬいぐるみなら別に痛くないから。
「……だって怖いし」
俺は阿古羅の顔から目を背けて、小さな声で言った。
「海里、怖いからって自分の意志を殺すな。猫になれ。気まぐれな猫のように、自分の意志を貫いて生きろ」
阿古羅が俺にぬいぐるみを渡して、真剣な顔で言う。